かつて、日韓共催サッカーワールドカップの前後、韓国企業の仕事をしていたことがありました。当時、韓国の伝統文化や韓国人の精神性を調べたり、現地の人に取材をしたりしていました。さすがに企業の広報誌だったため、北と南との問題まで掘り下げることがありませんでした。しかし、今、「愛の不時着」を観て、北と南ではいまだに冷戦状態が続き、その緊張感とともに、多くの人が複雑な思いを持ちながら生きていることが伝わってきました。
「愛の不時着」は、ご存知の通りNetflixで話題になっている韓流ドラマで、南(韓国)の財閥令嬢のユン・セリがパラグライダーで北側に不時着したところからスタートします。ラブストーリーではありますが、コメディ要素もあり、手に汗握るクライムサスペンスでもあり、複雑な感情が湧き立ちます。行ったこともないのに、北朝鮮の庶民の暮らし、平壌の町、市場の様子がリアリティがあるように思えます。統一したら旅行したい(笑)。また、モンゴルで撮影したと言われる列車と広い草原の空撮の映像は圧巻でした。自立した働く女性が普段表に出さない寂しさや切なさもうまく描かれており、前半、男性が女性を命がけで守り、後半、女性が男性を命がけで守るというバランスも良かったです。
さて、内容に関しては、インターネット上にさまざまな感想が載っているので、そちらを読んでもらうとして、私は、北と南、非現実と現実が複雑に混ざり合うところが非常に興味深かったので少しご紹介を。
現実問題として、日本は北朝鮮と国交はありません。独立した国家として認めてもいません。ただ、北朝鮮と国交がある国は結構多く、リ・ジョンヒョクはスイスに暮らしていた、ク・スンジュンはイギリスのパスポートを持っているという設定。確かにどちらの国も北朝鮮と国交があるんですよね。ちょっと驚きでした。そういえば暗殺された金正男もスイス留学経験がありましたね。一度世界に出てしまった北朝鮮の人々は、どんな思いなんでしょうか。大使館勤務の人は、家族を北に人質として残しておくことで、逃げないようにするという話を聞いたこともあります。独裁国家に生まれた宿命なのかもしれません。
物語の最終話には、開城近くの軍事境界線が出てくるのですが、北と南共同で建てた開城工業団地がその先にあります。せっかく統一への第一歩だったのに、数年前に操業を停止。この前は、韓国側の脱北者団体がチラシをばら撒いたことに腹を立てた金与正がこの工業団地にあった南北共同連絡事務所を爆破しています。
さらに、つい先週、3年前に北から韓国へ渡り韓国内で犯罪を犯した脱北者が、排水管をつたって漢江(ハンガン)に出て、泳いで北朝鮮側に戻ったというニュースも見ました。この人がコロナに感染していたとかいないとか騒がれています。排水管をつたうというリアルは、リ・ジョンヒョクが南に渡るシーンにも似て、ドラマとリアルが交じり合い、不思議な感覚を覚えます。
全話見終わり、北のことを調べたり、YoutubeやInstagramで俳優たちのことを調べていたらまた観たくなりました。とりあえずリ・ジョンヒョク役のヒョンビンのドラマを見始めましたが、どうも盛り上がらない。やっぱりあのハラハラドキドキ&号泣が恋しいです。これは、明らかに「愛の不時着沼」です。
小ネタ
あまり触れている記事が見つからないのですが、リ・ジョンヒョクが市場で買い物をする際に米ドルを出すのです。これ、自国通貨の信用度が低く、外貨が市場に出回っているとのこと。
ユン・セリの衣装は、ハイブランド揃いで列車のシーンで着ていたMIUMIUのチェックのコートが私はお気に入り。
まあ、韓国料理食べたくなりますよね。二子玉川のライズにいつの間にかキムパプ屋ができていました!
リ・ジョンヒョクがグクス(うどん)をユン・セリにつくってあげるシーンがあるのですが、私はカルグクス(あさりうどん)が好き。韓国料理らしくないんですよ〜。
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